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Interview

2018.2.26
《 札幌・共同住宅火災 》

【結城康博】「問題の本質は困窮者対策の民間への丸投げ。責任放棄はもうやめよう」

 


《 画像はイメージ 》

今度は北海道だった。1月31日の深夜、経済的に行き詰まった人たちを受け入れる共同住宅「そしあるハイム」が全焼。ここで暮らしていた高齢者ら11人の命を奪った猛火が、この国の暗部に巣くう貧困の実情に改めて関心を向けさせた。
 
共同住宅は木造の2階建て。築40年以上の元旅館だ。運営していたのは、札幌を中心として生活困窮者の支援に取り組んでいる「合同会社 なんもさサポート」。自立した生活が難しく身寄りのない人らに、住まいや食事、生活支援サービスなどを提供していた。16人の入居者のうち13人が生活保護の受給者。毎月の家賃は3万6000円程度に抑えており、数百万円の費用がかかるスプリンクラーをつける余裕はなかった。亡くなった11人の大半が高齢者で、心身機能がかなり低下している人もいたという。
 
「静養ホームたまゆら(群馬県渋川市)」の火災で10人が犠牲になり、社会に大きな衝撃を与えたのが2009年3月。あれから約9年の歳月が流れたが、同じことの繰り返しで問題の解決には至っていないようにみえる。淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授は、「このままではまたいつか同じような悲劇が起きてしまう」と警鐘を鳴らす。その理由や対策などを聞いてきた。(聞き手・編集 Joint編集部 青木太志)

《 淑徳大・結城教授 》

  −− 今回も多くの命が失われました。
 
生活保護を受けている身寄りのない高齢者が、運営コストを低く抑えられる木造の古い一軒家で暮らさざるを得ない現実があります。最低限の家賃しか徴収できないため、建物の管理者は防火設備を整える費用を確保できません。スプリンクラーをつけるなどの改善が急務で、そのために補助が必要なら速やかに出すべきです。
 
  −− また同じことの繰り返しです。
 
根本的な問題が解決されていないからでしょう。生活保護の行政と高齢者福祉の行政がうまく連動していないこと、この社会が貧困対策に十分なリソースを投じていないこと。それが本質だと考えています。
 
  −− 連動していない?
 
今回の共同住宅にいた高齢者は、何らかの障害を抱えていたり体が衰えていたりして1人暮らしが難しい方々です。本来なら養護老人ホームやケアハウスなどに入っていてもおかしくないですよね。でも実際はそうなっていません。高齢者福祉の枠組みで支える方がベターなのに、行政が十分に役割を発揮できていないんです。
 
  −− サポートが不十分?
 
生活保護費を支払ったら後はNPO法人などに丸投げ。十分な住環境の確保や生活支援まではフォローしていません。生活保護費を出すだけで事足りるのは、本来、お金さえあればなんとか自立した生活を送れる人だけのはずです。老いなどでそれが困難になっていたら、やはり高齢者福祉の行政がコミットして救い出すべきでしょう。でも現実は決められた日に最低限のお金を渡すだけ。あとは民間に丸投げです。
 
  −− なぜそうなるとみていますか?
 
自治体のマンパワーや財源の不足が大きいです。ただし、実態が行政の責任放棄に近いケースも少なくないでしょう。生活保護費を出すだけなら、かかる労力も費用もより少なくて済みます。つまり楽なんですよね。個々のケースを注意深くみて、高齢者福祉の世界観でそれぞれ充実した支援を展開していこうとすれば、その分だけ大変で予算もかかってしまいます。ですから確信犯的にお金を渡すだけにとどめておく…。こうした内実が問題の根っこだと考えています。いわゆる「貧困ビジネス」が生まれる背景とも言えるでしょう。いつも火災が起きたところに注目が集まりますが、どの自治体も状況は概ね同じだとみています。普段は弱小の民間団体に投げっぱなしのくせに、問題がクローズアップされると現場に責任の一端を押し付けるのはずるいですよね。
 
  −− 今後はどうしていけばいいでしょう?
 
やはりしっかりした困窮者の受け皿を用意しないといけません。養護老人ホームやケアハウスなどには定員割れのところもあります。最近になって特養も地方などで空床が出ていることがわかりました。まずは今ある社会資源をフル活用し、その人の状態に合った十分な住環境を提供していく努力をして頂きたい。そうした支援は今も行われていますが、まだまだ取り組みが十分とは言えません。民間への丸投げをやめることがファーストステップとなるでしょう。
 
  −− もうこんなことは起きてほしくありません。
 
このままではまたいつか同じようなことが起きます。悲劇は加速するでしょう。低年金・無年金の問題が深刻化していき、生活保護を受ける高齢者はさらに増えていくとみられます。そろそろ本気を出して考えないといけません。身寄りがなくお金のない人、自ら契約を結ぶのが難しい人が置き去りにされています。彼らをどう包摂していくか。生活保護や高齢者福祉といった行政の区切りを更新し、それぞれがうまく噛み合う仕組みを改めて検討して頂きたい。必要なら新たな税財源も投じるべきです。それは国民の最低限の生活を守り、社会の秩序を維持していくために不可欠な費用ではないでしょうか。

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